記事監修:田中 健太郎 氏
弁護士法人東京スカイ法律事務所 代表社員・弁護士
ここでは、自己破産の種類や手続きの大きな流れを解説しています。自己破産を考えているものの、何からどう始めて良いか分からない方は、ぜひ参考にしてください。
自己破産の手続き自体は、とても煩雑です。ただし、その煩雑な手続きを行うのは、ほとんどが弁護士などの代理人なのでご安心ください。信頼できる代理人と契約を結び、一刻も早く、金銭的・精神的な悩みから解放されましょう。
自己破産と一口には言いますが、具体的には3つの種類があります。1つめが「同時廃止」、2つめが「管財事件」、3つめが「少額管財」です。これらの3つの種類のうち、どの方法が適用されるかは、自己破産をする本人の財産の状況などを基に裁判所が判断することになります。
まずは、これら3種類の自己破産について、それぞれの違いを見ておきましょう。
自己破産の申立をすると、まずは管財事件の工程に入ります。管財事件の工程とは、自己破産の申立をした人の財産を処分し、そこから生まれたお金を債権者に分配する、という手続きのことです。
ところが自己破産の申立をした人の中には、処分する財産が残されていない人も少なくありません。その場合には、管財事件の工程がすぐに終了し、財産の売却や債権者への分配を省略した簡易的な「同時廃止」へと移行します。
債権者への返済に充てるための莫大な資産がある場合の自己破産では、管財事件として取り扱われることがあります。莫大な資産を持つ大企業の代表であるにもかかわらず、様々な理由で借金返済が難しくなった事例などにおいて、管財事件が適用されます。
なお、管財事件として取り扱われた場合、自己破産を申し立てた人は、裁判所に対する各種手続きの費用として「予納金」と呼ばれる費用を払わなければなりません。
処分して債権者に分配する資産はあるものの、管財事件ほどの資産はない場合に、少額管財が適用されます。具体的には、債権者に分配する資産が20万円以上あり、かつ裁判所に支払う予納金として現金・預金が33万円以上ある事例では、少額管財の事案になることが多めです。
多少の財産を所有する自営業者や中小企業経営者などが自己破産を申し立てた際、少額管財が適用になる可能性があります。
これら3種類の自己破産のうち、「管財事件」が個人の自己破産に適用されることはほとんどありません。また、「少額管財」は、地裁によっては利用できないこともあります(「少額管財」は、法律で作られた制度ではないため)。何より、自己破産を選択する人の多くには、経済的余裕がほとんどありません。
以上のような理由から、必然的に「管財事件」や「少額管財」は少なめとなり、「同時廃止」が多い傾向にあります。
自己破産には大きく3種類ありますが、どの種類であれ、手続きの流れは大きくは変わりません。ただし、「管財事件」や「少額管財」では財産処分や債権者への配当等の手続きが必要となるため、その分、「同時廃止」よりも手続きが長めになります。
参考までに、3種類の手続きそれぞれに要する期間の目安を見ておきましょう。
自己破産の種類により、短くて3ヶ月、長くて1年かかるというイメージです。 では、自己破産の手続きの流れの概要を確認します。
弁護士や司法書士など、まずは法律のプロに状況を説明し相談します。債務整理の方法にはいくつかありますが、プロの目から見て自己破産が妥当と判断された場合には、そのような提案を受けることでしょう。
相談する相手としては、債務整理の実績が豊富な法律事務所を選ぶことが重要。同じ法律のプロであっても、債務整理に詳しくない事務所もあるので注意してください。
信頼できるプロと巡り合ったら、自己破産の手続きを依頼して着手金を支払います。
自己破産の手続きを依頼すると、その法律事務所から債権者に対し「受任通知」が送付されます。
「受任通知」とは、「債務者の自己破産の手続き依頼を受理したので、これから手続きを進めていきます」という内容のお知らせです。
「受任通知」を受け取った段階から、債権者は債務者に対し、一切の取り立てをすることができなくなります。この効力は自己破産手続きが終わるまで続くため、この時点で、実質的には債務者は借金から解放されることになるでしょう。
裁判所へ自己破産の申立するために必要な書類を準備します。
提出する書類の種類は非常に多く、かつ書類をまとめるには専門知識が必要となりますが、これら書類を作成するのは弁護士等の代理人なので安心してください。自己破産をする本人は、弁護士等から指示された資料を用意するだけなので、さほど大変ではありません。
必要書類をそろえて裁判所に自己破産の申立をすると、裁判官・弁護士等・本人の三者による面談が行われます。借金の額、現在の資産の状況、自己破産にいたった経緯などについて、裁判官に詳しく説明します。
三者面談の結果、裁判官が「自己破産をするにふさわしい」と判断した場合には、破産手続き開始決定が出され、「同時廃止」「管財事件」「少額管財」のいずれかの方法で手続きが始まります。
財産を売却して債権者に配当を行う(管財事件・少額管財の場合)
自己破産の方法として「管財事件」または「少額管財」が適用された場合、裁判所から選任された破産管財人が、債務者の財産を処分して現金化し、債権者に平等に現金を分配します(配当)。
なお上述の通り、「管財事件」や「少額管財」が適用された場合には、自己破産をする本人は、破産管財人への報酬として、予納金と呼ばれる費用を裁判所に支払わなければなりません。
裁判所における一連の自己破産手続きが終了する直前、自己破産をする本人は、あらためて弁護士等とともに裁判所へ出頭して裁判官の面接を受けます。今回の自己破産における最終確認という位置づけで、これを「免責審尋」と言います。
「免責審尋」の結果、裁判所が特に問題なしと判断すれば、裁判所から「免責許可」の通知が届きます。この通知をもって自己破産手続きが終了となり、借金の返済義務が法的に消滅します。
※参照元:弁護士法人・響(https://hibiki-law.or.jp/debt/hasan/6056/)
以上、自己破産の3つの種類や手続きの大きな流れを解説しました。
以下でご紹介するページでは、自己破産についてより深く知りたいという方のために、よくある質問をテーマごとに分けて詳しく解説しています。ぜひ参考にしてみてください。
自己破産をするためには、自己破産の申立に必要な書類をそろえて裁判所へ提出する必要があります。ただし提出する書類の種類はとても多く、なおかつ、まとめる作業が非常に煩雑。素人が完璧に用意できるようなものではありません。
そのため、ほとんどの人は、弁護士や司法書士などの法律の専門家に自己破産の申立をサポートしてもらう形となるでしょう。
自己破産をするには一体なにから
すればいい?書類はどんなものがある?
個人破産と法人破産は、同じ「破産」でもさまざまな面で大きな違いがあります。事業を運営している人や、何らかの債務のある人は、破産について理解しておくべきかもしれません。こちらでは、個人破産と法人破産の大きな違いを3つご紹介していきます。
自己破産の手続きをするにあたり、一般的には弁護士や司法書士に依頼し、手続を代理で行ってもらうケースがほとんどかと思います。しかし、その際に弁護士と司法書士のどちらに依頼すればよいか迷ってしまう方もいるのではないでしょうか。
弁護士や司法書士などの専門家にサポートをしてもらったとしても、裁判所の判断で、自己破産が認められないケースがあります。反社会的・反道義的な理由での借金や、自分勝手な理由などでふくらんでしまった借金などです。これを専門用語で「免責不可事由」と言います。
専門家を通じて申し立てれば、多くの場合は自己破産が成立しますが、「100%自己破産が成立する」というわけではないことを理解しておきましょう。
このページの上のほうで説明した通り、自己破産には「同時廃止」「管財事件」「少額管財」の3種類があります。換金できる資産がほとんどない場合には「同時廃止」、換金できる資産が大量にある場合には「管財事件」、換金できる資産が少しだけある場合には「少額管財」とイメージしてください。どれが適用になるかは、裁判所が決定します。
主に裁判所に支払うトータルの費用として、「同時廃止」が約1万~3万円、「管財事件」が50万円~、「少額管財」が約20万円前後とされています。これに弁護士等に支払う報酬が加わる形となります。
弁護士等に支払う報酬は、事務所によって大きく異なります。
参照元:ベンナビ債務整理(https://saimuseiri-pro.com/columns/self-bankruptcy/73/)
借金の問題を解決、または軽減する方法として、自己破産のほかにも任意整理や個人再生があります。
自己破産は、一切の返済義務が免除される手続きであることに対し、任意整理や個人再生は、返済の負担が軽減される手続きのこと。借金の状況に応じ、弁護士等がその人に適した手続きを提案します。
自己破産の一連の手続きは、弁護士以外に代理を務めることはできません。書類作成を司法書士に代理してもらうことはできますが、手続き自体を代理してもらうことはできません。
自己破産の手続きは「自分でやるか、弁護士に代理してもらうか」しか選択肢がないと考えてください。
自己破産を弁護士へ相談する際に何も準備をしないで相談に行っても話が進みません。弁護士とのやり取りをスムーズに行うために、自己破産の相談をする前に最低限やっておきたい準備があります。
自己破産の3つの種類のうち、「同時廃止」は約3~4ヶ月、「管財事件」は約6~12ヶ月、「少額管財」は約4~6ヶ月の期間を要します。
先にも説明した通り、自己破産のほとんどの事案は「同時廃止」。そのため、自己破産手続きは約3~4ヶ月で終わるケースが多いでしょう。
自己破産の申立をしたものの、再就職が決まるなどの理由で、申立を取り下げたいという人もいるでしょう。
この場合、破産手続きが始まっていなければ申立を取り下げて全てを中止することが可能ですが、すでに破産手続きが始まっていた場合には、申立を取り下げることができません。慎重に検討をしてから申立をするようにしましょう。
理屈のうえでは、自己破産の手続きを自分ですることができます。ただし、自己破産に必要な多くの書類や資料を用意することは、素人には決して容易ではありません。手こずっている間に、債権者から訴えられ、強制的な取り立てが開始されることもあります。
確実に自己破産を成立させるためには、多少の費用はかかるものの、弁護士の力を借りることを強くおすすめします。
弁護士から連絡がない場合は、ほとんどが順調に手続きが進んでいます。もし、弁護士から連絡がなく不安になってしまう場合は、こちらから連絡を取り、現在の進捗状況や手続き完了の目処などを聞きましょう。
電話で連絡が取りにくい場合はメール対応もしている弁護士があるので、メールでの進捗状況の返信をお願いしておくと良いでしょう。
自己破産と生活保護は両立できます。自己破産をしても生活保護は受けられるのでしっかりと覚えておきましょう。しかし、あなたの状況によってどちらを先に手続きしたら良いかは変わってくるので素人ではなかなか判断がしにくいことです。どちらを先にした方が良いかは、弁護士や専門家に一度相談してから決めていくのが良いでしょう。
自己破産時の財産隠しはバレる可能性が高いので絶対やめましょう。もし、財産隠しをした場合は、「詐欺破産罪」に問われる場合も。また「免責不許可事由」にもなってしまいます。そうなると、借金返済免除はされず、借金がゼロになりません。借金をなくしたいのにそうなっては本末転倒ですよね。したがって財産隠しは絶対にやめましょう。
自己破産の手続きを弁護士に依頼しても必ず受けてもらえるとは限らず、場合によっては断られることもあります。断られるケースとしては、借金が少額な場合や本人に支払い能力があると判断された場合、免責不許可事由に該当する場合などです。ただし、弁護士側の事情で断られることもあるため、1度断られたからといって諦める必要はなく、別の法律事務所にも相談してみましょう。
自己破産できるかどうかは債務者が支払不能な状態かどうかで判断されるので、借金額については条件に含まれていません。そのため、たとえ借金が100万円以下だったとしても、支払能力がないと判断されれば自己破産が認められる可能性があります。借金額が少ないからと自己破産を諦める必要はないので、まずは借金問題に詳しい弁護士に相談してみましょう。
合理性のない借金を繰り返さないため、裁判所は自己破産申請者に「反省文」の提出を求めることがあります。次のページでは反省文が必要な理由や提出を求められるケース、陳述書との違いなど自己破産時の「反省文」について詳しく解説しています。
自己破産で借金の免責を受けるためには、さまざまな書類と一緒に、家計簿の提出も求められます。裁判所は家計簿からお金の動きを見ることで、本当に借金を返済できない状態にあるのか、免責不許可事由に該当する行為がないかをチェックしているのです。次のページでは自己破産の手続きで求められる自己破産の家計簿について解説しています。
自己破産は、法的要件をみたせば年齢に関係なく行うことが可能です。ただ、高齢者や未成年者が自己破産をするときには、いくつかの注意点もあります。ここでは、自己破産の年齢制限や高齢者・未成年の自己破産について考えていきます。
自己破産の申し立てを行う際は、申立書や陳述書、収入や支出を証明できるものなど、さまざまな必要書類を揃える必要があります。これらの必要書類を揃えられないと、手続きが進みません。自己破産の手続きをスムーズに進めるためには、弁護士に相談するのがおすすめです。
弁護士であれば誰でも自己破産の申し立てを行うことができますが、自己破産が得意分野とは限りません。自己破産に精通する弁護士に依頼しなければ、申し立てが認められない可能性もあります。ここでは、自己破産したいときの弁護士の選び方について紹介しています。
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2011年(平成23年)設立の弁護士事務所。良心的な価格設定と相談しやすい体制が特長です。自己破産などの債務問題を得意としており、法律相談実績は2023年7月調査時点で20,000件以上(※)。実力派の弁護士ぞろいで、借金問題については無料での法律相談を実施しています。